1000分の1秒差ってどのくらい?
計測システムによっては100分の1秒差までのものもありますが、JMSの使用している計測システムは1000分の1秒単位でのタイム計測が可能です。
タイム計測を行うためには、どのくらいの精度が必要なのでしょうか?
100分の1秒でも充分ではないでしょうか?
まず「1000分の1秒」って、どのくらいの差になるのかを確認しましょう。
時速 | 20km | 50km | 60km | 70km | 80km |
1000分の1秒で進む距離 | 0.56cm | 1.39cm | 1.67cm | 1.94cm | 2.22cm |
トップレベルのマラソン選手は42.195kmを2時間強で走りますから、単純計算だと時速21kmくらいです。2時間強も時速21km(1秒間だと5.8mくらい。50mだと・・・8.6秒!?普通の人の全力疾走の速さですね!)で2時間も走り続けられるというのはもの凄いことですね!
しかし、1000分の1秒で見れば0.56cmの差です。このくらいの差は目視やビデオで見ても同着としか判断できないでしょう。
100分の1秒では5.6cmの差です。これくらいの速度であれば、100分の1秒の精度でも計測できないこともなさそうです。
自転車レースのゴールスプリントでは時速70~80kmになることもありますので、だいたい2cmくらいの差が「1000分の1秒差」になります。
視覚的な表現とすると、「タイヤの厚み分くらいの差」です。
100分の1秒の精度ではとても計測できません。自転車レースには1000分の1秒の精度は必須でしょう。
ちなみに、東海道新幹線の最高速度285km/hの場合は1000分の1秒で7.92cm、音が空気中を伝わる速度(音速)の場合は34.03cm進みます。
1000分の1秒の世界で見ると音も意外と速くないんですね。光や電波は同300kmくらい・・・桁違いに速いですね。
ゴール時、5cmくらいの差があれば、チップでの計測結果はおおむねそのまま信頼できます。
しかし、それ未満の僅差である場合、ビデオでの確認と審判との協議が欠かせません。
計測システムで測定できるのは、あくまで計測チップがゴールライン(厳密に言えば計測用アンテナの中心ですが、アンテナの中心がゴールラインになるように設置しています)を通過した時刻です。その時刻差から順位やタイムを計算しています。
しかし、実際の順位判定は競技によって多少は違いはあるものの、競技者がゴールに触れた順であり
自転車レースについては「前輪のタイヤ先端がゴールラインに達した順」とする必要があります。
ところがタイヤの先端から計測チップまでの距離は、自転車への計測チップの取付位置により一定ではありません。
この距離を揃えられれば計測精度は上がるのですが、フロントフォークの形状や太さなどの違いで、全ての自転車で同じ距離にするということは不可能です。
我々がチップ反応の強度を上げるため「できるだけ下につけて欲しい」ということも、1センチ程度は前後位置を変える可能性はありますね。
そのため、チップ計測を導入しても目視やビデオ撮影と審判との協議は必須なのです。
目視やビデオ撮影がどれだけレースのリザルトに影響するかは、また別のコラムでお話しますね。
以上、1000分の1秒差のお話でした。